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執筆者の写真出馬 幹也

組織とは何か? その2

組織というものを、ピラミッド型ではなく、経営層と現場層の2層に分けて捉える、ということを私は主張しています。その狙いは、無用な(有害な)役割・責任の「混同」をなくすため、に他なりません。


世の中の経営者、否、一般の社会人のほとんどが組織をピラミッドで捉えるが為に、組織に期待される業績・成果が上がるどころか、問題山積みのままで低迷してしまう組織があまりにも多すぎるのです。私はそれをこの20年間、現場サイドと経営サイドの両面から観察してきました。私自身が社員として実体験を有する製造業においては無論ですが、現在の職において本格開始した地方自治体への支援活動においてすらその傾向・実態は変わらず、現実としてそこにありました。


では改めて、何が組織経営における問題なのかを考えてみます。




まず第一に、先の記事においても述べた「現場の判断に経営層がむやみに入り込む」ことの弊害は大きいと考えます。課長・係長等、現場リーダー層をはじめとして、現場そのものを思考停止状態に追い込むリスクがそこにあるのです。要するに、現場で出来る最大限の努力を途中で止め、上位者への報告実績や承認受けの経過をもって、本来とるべき行動をとらない(次の指示・命令まで待つ)ということです。まさしく思考停止、あるいはプロであれば当然持つべき使命感・職責意識の放棄にもつながる、ということですね。


次に挙げるべき大きな問題は、経営層の意思決定の欠如というものです。今決めておかないと、5年先に大変な状況になる、そのような課題は山ほどあります。例えば現時点でも社会問題として顕在化している「人材」の確保。社会の変化が激化するとそれに合わせて業務の革新を現場では果たす必要がありますが、ICT等を最大活用したシステムを導入しても追いつけない変化が現実となり、さらに加速度を増していくことも皆が知るところです。いかにAI・ロボティックスの活用がなされたとしても、それを上手く現実に適合させていくのは、まさしく「変化を扱える」専門人材でしかありません。資格や技能も不可欠ではありますが、このような状況対応において真に必要なのは、未来を予測し、自分たちの手で現実を変化させていける、という能力発揮です。研修受講などの方策だけで、一朝一夕に育てられる人材ではありません。まさしく5~10年のスパンを見通した、経験学習(キャリアパス)を取り入れた「人材戦略」を定め、動かし続けるという、経営層のコミットメントが必要だということなのです。


もしも5~10年前から確保(採用)と育成(教育)の二面で対処を始めていれば対処できたかもしれない、そのような類の経営課題が「人材」の領域であるということですが、それを”人事部長”に任せるだけで良かったのでしょうか?あるいは、日々の問題解決と目標達成に精一杯な現場層にそのような未来予測をたて、自分たちだけで対処していくことを期待すべきだったのでしょうか?…明らかに無理な話です。経営層が一丸となり、自分事として予測をたて、リスク承知の意思決定を行い、未来の変化に備える動きをとり続けていかねばならない、そういうことなのだと私は思います。


組織経営とは、変化を続ける社会に対応し、いかに時代が変わろうとも常にそこに在ることが許され、期待され、選ばれ、未来を創造するための「貢献者」であり続けられるように、意思決定と説明責任という方法論で舵を切り続けることであると思います。その重責を担うのが経営層であるということ。現場が担う種類の責任とは大きく異なっていることがご理解いただけるのではないでしょうか。

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